Active Directory のグループを整理する

グローバルグループ・ドメインローカルグループ・ユニバーサルグループ・ローカルグループ。似た名前を、置き場所と役割で区別する

📅 作成: 2026-09-18 / 更新: 2026-09-18

目次

  1. 名前の歴史 — NT 4.0 から Active Directory へ
  2. 見分け方は「¥ の左」
  3. ファイルの権限を付けられるのは何か
  4. グローバルとドメインローカルの違い
  5. AGDLP — 権限を組み立てる型
  6. ユニバーサルグループはいつ使うか
  7. ワークグループとドメイン参加

名前の歴史 — NT 4.0 から Active Directory へ

グループの名前が紛らわしいのは、昔は 2 種類だったものが、今は 4 種類に分かれているためです。分かれた経緯を知ると、名前の重なりが整理できます。

昔(Windows NT 4.0 のドメイン)

当時からドメインコントローラーは DC と呼んでいました。この呼び方は今も変わっていません。そして当時のグループは、次の 2 種類だけでした。

ただし「ローカルグループ」には、実は置き場所の違う 2 つが混ざっていました。DC の上に作ったものと、個々のサーバの上に作ったものです。同じ名前なのに効く範囲が違う、というのが当時の分かりにくさでした。

今(Active Directory)

Active Directory では、この混ざっていた 2 つがはっきり別の名前に分かれ、さらに新種が 1 つ加わりました。

Windows NT 4.0 グループは 2 種類 グローバルグループ ローカルグループ DC 上のものと、サーバ上のものが 同じ名前で混ざっていた Active Directory スコープが 4 種類に グローバルグループ ドメインローカルグループ ローカルグループ ユニバーサルグループ 名前も意味もそのまま DC 上のもの → 改名 サーバ上のもの → そのまま 新しく追加された
NT 4.0 の 2 種類が、Active Directory で 4 種類に分かれた

改名されたのはドメインローカルグループだけです。グローバルグループもローカルグループも、名前は昔のまま残っています。「昔はグローバルグループと言っていた」という記憶は正しく、今もその呼び方で通じます。

もうひとつの軸 — セキュリティと配布

ここまでの 4 種類は「スコープ」という軸の話です。グループにはもう 1 つ、これと直角に交わる「種類」という軸があります。

選択肢何を決めるか
スコープドメインローカル / グローバル / ユニバーサル誰をメンバーにできるか、どこで効くか
種類セキュリティ / 配布権限に使えるか、メール配布専用か

2 つの軸は独立しているので、グループを作るときは必ず両方を選びます。つまり「グローバルグループ」と呼んでいるものの正体は、グローバルセキュリティグループグローバル配布グループのどちらかです。

ファイルサーバの権限に使うのは常にセキュリティグループなので、実務で「グローバルグループ」と言うときは、ほぼ前者を指しています。

見分け方は「¥ の左」

用語が区別できない一番の原因は、そのアカウントがどこに保存されているかが見えないことです。しかし実は、画面の表示だけで一瞬に見分けられます。

¥ の左だけを見ればよい

SERVER01\田中             ← ¥の左がマシン名   → そのサーバのローカルアカウント
CONTOSO\田中              ← ¥の左がドメイン名 → AD のアカウント
CONTOSO\営業部            ← ¥の左がドメイン名 → AD のグループ
BUILTIN\Administrators    ← そのマシンの組み込みローカルグループ

アカウントの置き場所は 2 か所しかありません。

SERVER01(1 台のサーバ) 中に SAM という小さな DB を持つ SERVER01\田中 SERVER01\経理閲覧可 このサーバの外では一切使えない DC(ドメインコントローラー) AD データベースを持つ CONTOSO\田中 CONTOSO\営業部 ドメイン内のどのサーバからも使える 別人 SID が違う 名前が同じでも、置き場所が違えば完全に別のアカウント
同じ「田中」でも、¥ の左が違えば内部的にも別人

SID という背番号

Windows はアカウントを名前ではなく、SID という長い背番号で管理しています。ファイルの権限に記録されるのも名前ではなく SID です。

SERVER01¥田中CONTOSO¥田中 は、名前が同じでも SID がまったく違います。人間の目には同じに見えるのに Windows にとっては赤の他人、というのがこの世界の基本です。

ローカルアカウントは AD に参加しても消えません。サーバをドメインに参加させた後も、そのサーバのローカルユーザーとローカルグループはそのまま残り、使い続けられます。増えるのは「ドメインのアカウントも使えるようになる」ことだけです。

ファイルの権限を付けられるのは何か

結論を先に言うと、SID を持っているものは、すべてファイルやフォルダの権限に指定できます。ここで悩む必要はありません。

対象権限に使えるか効く範囲・補足
ローカルユーザー使えるそのマシンの中だけ
ローカルグループ使えるそのマシンの中だけ
ドメインユーザー使えるドメイン参加サーバならどこでも
グローバルグループ使えるフォレスト内のどこでも
ドメインローカルグループ使える同じドメイン内のサーバだけ
ユニバーサルグループ使えるフォレスト内のどこでも
コンピューターアカウント使えるサーバがサーバへアクセスする場面で使う
Everyone / SYSTEM など使えるOS が用意している特殊なもの
配布グループ使えないメール配布専用。権限には指定できない
SID を持つもの ローカルユーザー / グループ ドメインユーザー グローバルグループ ドメインローカルグループ ユニバーサルグループ 配布グループ(SID を使えない) 登録できる 登録できない フォルダの ACL アクセス許可の一覧 S-1-5-21-…-1108 変更 S-1-5-21-…-1203 読み取り 記録されるのは名前ではなく SID
ACL に書かれるのは SID。だから SID を持つものはすべて指定できる

本当に考えるべきは別のこと

「どれに権限を付けられるか」は答えが全部同じなので、判断材料になりません。実際に考えるべきなのは次の 2 点です。

  1. 誰をメンバーにできるか
  2. どのサーバでその権限が効くか

この 2 点こそが、グローバル・ドメインローカル・ユニバーサルを分けている違いそのものです。次の章で見ていきます。

グローバルとドメインローカルの違い

学校でたとえる

2 つの箱は、役割がはっきり分かれています。

正しい使い方は、「2 年 A 組の生徒」という名簿をまるごと「図書室に入れる人」の束に入れることです。生徒を 1 人ずつ許可証の束に入れるのではありません。

入口と出口の広さが逆になっている

この 2 つは、メンバーにできる範囲(入口)権限を付けられる範囲(出口)が、ちょうど逆になるよう設計されています。

入口 = メンバーにできる範囲 出口 = 権限を付けられる範囲 グローバルグループ 人を所属でまとめる 「営業部」「経理部」 同じドメインの人だけ フォレスト内のどこでも ドメインローカルグループ 権限をまとめる 「見積_変更可」 フォレスト内どこの人でも 自分のドメイン内だけ ユニバーサルグループ 両方広いが複製が重い 多ドメイン専用 フォレスト内どこの人でも フォレスト内のどこでも
グローバルは入口が狭く出口が広い。ドメインローカルはその逆
スコープメンバーにできるもの(入口)権限を付けられる場所(出口)
グローバル同じドメインのアカウントだけ(狭い)フォレスト内のどこでも(広い)
ドメインローカルフォレスト内どのドメインからでも(広い)自分のドメイン内だけ(狭い)
ユニバーサルフォレスト内どのドメインからでも(広い)フォレスト内のどこでも(広い)

覚え方は「グローバルは入口が狭くて出口が広い。ドメインローカルはその逆」です。この非対称が、次の章の AGDLP という組み立て方につながります。

AGDLP — 権限を組み立てる型

Microsoft が昔から推奨している組み立て方に AGDLP という型があります。4 つの頭文字を、この順につないでいくという意味です。

A アカウント 田中・鈴木・佐藤 G グローバルグループ 「営業部」 DL ドメインローカル 「見積_変更可」 P フォルダの権限 ACL に 1 行だけ 入れる 入れる 付ける 異動で触るのはここだけ メンバーを入れ替えるだけで済む 一度作ったら二度と触らない ここを触る運用は必ず破綻する
AGDLP の流れ。人の出入りはグローバルグループ側だけで吸収する

なぜこの型が要るのか

ACL に個人を直接書いてしまうと、人事異動のたびに全サーバのフォルダを調べて回ることになります。しかも「どのフォルダにその人が書かれているか」を調べる手段が実質ありません。

AGDLP で組み立てておけば、異動があってもグローバルグループのメンバーを入れ替えるだけで済みます。ACL には二度と触りません。

場面ACL に個人を直接書いた場合AGDLP の場合
入社必要なフォルダすべてに追加グローバルグループに入れるだけ
異動旧部署のフォルダを探して削除、新部署に追加所属グループを入れ替えるだけ
退職どこに書いたか分からず取り残されるグループから抜くだけで全部消える
棚卸し実質不可能グループのメンバーを見れば分かる

命名の例

グローバルグループ(所属でまとめる)
  G_営業部
  G_経理部
  G_システム部

ドメインローカルグループ(できることでまとめる)
  DL_見積フォルダ_変更
  DL_見積フォルダ_参照
  DL_給与フォルダ_参照

フォルダの ACL には DL_ だけを書く
  \\FS01\見積  ←  DL_見積フォルダ_変更(変更)
                   DL_見積フォルダ_参照(読み取り)

単一ドメインならグローバルを省く流儀もあります。小規模な環境では「グローバルグループを直接 ACL に書く」運用もよく見ます。動きますし間違いでもありません。ただし将来ドメインが増えたときや、権限の種類が増えたときに作り直しになります。

ユニバーサルグループはいつ使うか

使う場面は限られている

ユニバーサルグループの出番は、ドメインが 2 つ以上あるフォレストで、ドメインをまたいで人をまとめたいときだけです。

ドメインが 1 つしかない環境では、正直ほとんど出番がありません。グローバルグループで足ります。「なんとなく一番強そうだから」で選ぶものではありません。

気軽に使わない理由

ユニバーサルグループは、メンバーの一覧がグローバルカタログに丸ごと載り、フォレスト全体の DC へ複製されます。人の出入りが多いグループをユニバーサルにすると、そのたびにフォレスト全体で複製が走ります。

使うときの作法 — 中身に個人を入れない

そこで、ユニバーサルグループの中には個人を直接入れず、各ドメインのグローバルグループを入れ子にします

東京ドメイン G_営業部 大阪ドメイン G_営業部 U_全社営業 ユニバーサル・中身は 2 行だけ DL_共有_変更 ドメインローカル ACL 人の出入りは左端のグローバルグループで吸収され、ユニバーサルの中身は変わらない
AGUDLP。ユニバーサルグループの中身が変わらないので、複製の負荷も増えない

こうすると、人の出入りはグローバルグループ側で吸収されます。ユニバーサルグループの中身は 2 行のまま変わらないので、グローバルカタログへの複製も発生しません。この形を AGUDLP と呼びます。

作り方

Active Directory ユーザーとコンピューター
  → 対象の OU を右クリック
  → 新規作成 → グループ
  → グループ名     : U_全社営業
  → グループのスコープ: ユニバーサル
  → グループの種類   : セキュリティ

スコープと種類は別々に選びます。権限に使うなら種類は必ずセキュリティです。

迷ったらグローバルを選んでください。後からスコープを変更することもできますが、条件があり(たとえばグローバルからユニバーサルへは、他のグローバルグループのメンバーになっていないことが必要)、常に自由に変えられるわけではありません。単一ドメインならグローバルで困りません。

ワークグループとドメイン参加

「ID とパスワードが同じならつながる」は半分正しい

ワークグループでは、各マシンが自分の SAM を持っています。2 台のマシンに同じユーザー名・同じパスワードのローカルアカウントを作っておくと、ネットワーク越しのアクセスでパスワードを聞かれずに通ります。これは パススルー認証 と呼ばれる NT 時代からの挙動で、確かにつながります。

しかし、それは「アカウントを共有している」のではありません。たまたま同じ名前・同じパスワードの別人が 2 人いるだけです。

ワークグループ 各マシンが自分で認証する SERVER-A SAM 田中 / PW SERVER-B SAM 田中 / PW SERVER-C SAM 田中 / PW 名前と PW が同じだけの「別人」が 3 人 SID はすべて違う 1 台でパスワードを変えた瞬間に そこだけつながらなくなる サーバ 10 台 × 利用者 20 人 = 200 個を手で同期し続ける ドメイン(Active Directory) DC がまとめて認証する DC AD データベース(田中 は 1 つだけ) SERVER-A ドメイン参加 SERVER-B ドメイン参加 SERVER-C ドメイン参加 アカウントは 1 つ。パスワード変更も 1 回 各サーバのローカルアカウントは残ったまま使える
ワークグループは「同名の別人」を手で揃え続ける仕組み。ドメインはアカウントを 1 つに集約する

ワークグループが破綻する理由

破綻の仕方が厄介です。「ある日突然、一部の人だけ、一部のサーバにつながらない」という形で現れます。全体が止まればすぐ気づきますが、部分的にずれるので発見が遅れ、原因の特定にも時間がかかります。Active Directory が生まれた理由がまさにここにあります。

ドメインに参加させると何が変わるか

「AD に参加させたら、その AD の管理下となる」という理解で合っています。具体的には次のように変わります。

項目参加前(ワークグループ)参加後(ドメイン)
認証する相手自分のマシン(SAM)DC
パスワードの置き場各マシンにバラバラDC に一元化
設定の配布1 台ずつ手作業グループポリシーが自動適用
ローカルアカウントあり消えずにそのまま残る
管理の単位マシン 1 台ずつドメイン全体をまとめて

参加した瞬間に自動で起きること

ドメインの Domain Admins  →  そのマシンのローカル Administrators に自動追加
ドメインの Domain Users   →  そのマシンのローカル Users に自動追加

つまりドメイン管理者は、参加した瞬間からそのサーバの管理者になります。これが「管理下に入る」の実体です。

裏を返すと、ドメイン参加とは「このマシンの管理者権限の合鍵を DC に預ける」ことでもあります。DC が乗っ取られれば、参加している全サーバが同時に乗っ取られます。便利さと引き換えに、DC の保護が一段と重要になります。

参加後もローカルアカウントは残る

よくある誤解ですが、ドメインに参加してもそのサーバのローカルユーザーとローカルグループは消えません。lusrmgr.msc で今までどおり見えますし、使えます。

増えるのは「ドメインのアカウントもこのマシンで使えるようになる」ことだけです。ローカルの Administrators に、ドメインのグループを追加できるようになる、という関係です。